機構はこれまでに通算約800回の起債を実施する中で、IR活動を通じてマーケットとの対話を積み重ねながら投資家層の拡大に努めてきたほか、将来の金利上昇リスクを軽減するために長期/超長期の発行年限の多様化、ソーシャルボンド(社会貢献債)の発行などを行ってきました。 また、高速道路資産を保有し、これを会社に貸し付けるにあたり、高速道路のサービスレベルについて安全性や快適性の維持・向上に十分に配慮しつつ、その貸付料収入等で将来の債務返済が着実に進展するよう取り組んできました。その結果、機構発足以来、年度ごとのアップダウンは多少あるものの、債務残高を概ね10兆円減少させてきました。 今後は、金融環境や国際情勢の変化、自然災害の激甚化・頻発化等の新たな事業環境における不確実性の高まりが予想されます。2024年3月のマイナス金利政策解除による「金利のある世界」の到来により金融市場のボラティリティが高まると見込まれる中、長期的な資金収支を見通したデット・マネジメントが最大の業務課題であると認識しています。また、高速道路の機能を将来にわたり維持するため、2023年に「道路整備特別措置法及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法の一部を改正する法律」が成立・施行されました。これを受け、2024年3月の会社との協定に料金徴収期間の延長、抜本的な性能回復を図る更新事業、国土強靭化等の社会的要請を踏まえた進化事業を反映しました。今後も高速道路の適正な管理や機能強化に、国及び会社と一体となって取り組んでまいります。 日本の経済・社会における高速道路の役割は、グローバル化、IT化が進展し、自然災害等の社会的リスクが拡大する中で、今後もますます重要になっております。機構においては、業務課題への取組みを集約したアクションの策定・実行と、道路・財務のプロ集団化へつなげる人材育成を推し進めることにより、安全で利便性の高い高速道路サービスを、国民負担を軽減しながら適正な料金で提供し続けることに貢献してまいります。 機構は、2005年の発足以来、日本の産業基盤・生活基盤の一つである高速道路サービスの拡大、保全の充実を支援しつつ、それらを支える資金調達と債務の返済を通じてデット・マネジメントとアセット・マネジメントを担ってきました。 2024年10月で機構発足から19年を迎えました。この間、着実に高速道路の整備は進み、機構発足時に8,948kmだった供用延長が、2023年度末には10,458kmになりました。債務返済規模は、2010年代前半までは約4兆円の規模が続き、2020年代に入ってからは約3.5兆円で推移しています。一方で、資金調達規模は2000年代後半の3兆円規模から、2020年代には1兆円規模へと縮小しています。また、債務残高の減少等に伴い、1年間の金利負担は当初の6,000億円規模から約2,400億円へと減少しています。21理事長 高松 勝4.おわりに
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